小松法律事務所

家事事件手続法での子の監護者・親権者等決定子の意思尊重規定覚書1


○平成25年1月1日から施行されている家事事件手続法には、子の監護者・親権者等決定に当たっての家庭裁判所における子の意思尊重規定を置いています。私の備忘録としてその具体的条文を抜粋して記載します。

○子の意思の尊重には、当然の前提として、子に「意思能力」があることが必要です。ここでの子の「意思能力」とは、一般論と同じく「自分の行為の結果を判断することの出来る精神能力で、正常な認識力と予期力を含むもの」と定義されています。実務上、意思能力があると判断される具体的基準は、「中学生以上はもちろん、小学校高学年以上であれば原則として意思能力を認めてよい」として運用されています。

○ですから離婚で、父母間において親権者争いになった場合、子が、小学高学年即ち小学4,5年以上であれば、その子の意思によって親権者が決められると言っても差し支えないでしょう。問題は、子が父母の立場、思いをおもんばかって、意思を表現できない場合、或いは、真意と異なる意思を表現する場合もあることです。実務においてはこの辺の見極めは慎重に行うべきでしょう。具体的ケースによっては、子どもの意思を確認しないことが、子どもの意思を尊重になる場合もあることに注意すべきです。

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家事事件手続法
第5款 家事審判の手続における子の意思の把握等
第65条

 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

子の監護・親権に関しての15歳以上の子どもの陳述聴取を義務づける規定
第152条(陳述の聴取)

 (中略)
2 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判を除く。)をする場合には、第68条の規定により当事者の陳述を聴くほか、子(15歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。

第157条(婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分)
 (中略)
2 家庭裁判所は、前項第三号に掲げる事項について仮の地位を定める仮処分(子の監護に要する費用の分担に関する仮処分を除く。)を命ずる場合には、第107条の規定により審判を受ける者となるべき者の陳述を聴くほか、子(15歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。ただし、子の陳述を聴く手続を経ることにより保全処分の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

第169条(陳述の聴取)
 家庭裁判所は、次の各号に掲げる審判をする場合には、当該各号に定める者(第一号、第二号及び第四号にあっては、申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。この場合において、第一号に掲げる子の親権者の陳述の聴取は、審問の期日においてしなければならない。
一 親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判 子(15歳以上のものに限る。)及び子の親権者
二 親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消しの審判 子(15歳以上のものに限る。)、子に対し親権を行う者、子の未成年後見人及び親権を喪失し、若しくは停止され、又は管理権を喪失した者
三 親権又は管理権を辞するについての許可の審判 子(15歳以上のものに限る。)
四 親権又は管理権を回復するについての許可の審判 子(15歳以上のものに限る。)、子に対し親権を行う者及び子の未成年後見人
2 家庭裁判所は、親権者の指定又は変更の審判をする場合には、第68条の規定により当事者の陳述を聴くほか、子(15歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。

第175条(親権者の指定又は変更の審判事件を本案とする保全処分)
 (中略)
2 前項の規定により仮の地位の仮処分を命ずる場合には、第107条の規定により審判を受ける者となるべき者の陳述を聴くほか、子(15歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。ただし、子の陳述を聴く手続を経ることにより保全処分の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
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