小松法律事務所

家事事件手続法の基礎の基礎-審判前の保全処分備忘録


○「家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判審理原則備忘録2」の続きで、審判前の保全処分備忘録です。
旧家事審判法の1980年改正で規定された審判前の保全処分制度を家事事件手続法でも承継
家事事件手続法規定は105条以下
第105条(審判前の保全処分)
 本案の家事審判事件(家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にあっては、その家事調停事件)が係属する家庭裁判所は、この法律の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずる審判をすることができる。
2 本案の家事審判事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前項の審判に代わる裁判をする。
第106条(審判前の保全処分の申立て等)
 審判前の保全処分(前条第1項の審判及び同条第2項の審判に代わる裁判をいう。以下同じ。)の申立ては、その趣旨及び保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならない。
2 審判前の保全処分の申立人は、保全処分を求める事由を疎明しなければならない。
3 家庭裁判所(前条第2項の場合にあっては、高等裁判所)は、審判前の保全処分の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、事実の調査及び証拠調べをすることができる。
4 審判前の保全処分の申立ては、審判前の保全処分があった後であっても、その全部又は一部を取り下げることができる。


○保全処分の具体的態様
・第1類型(財産の管理者の選任等の処分)-法126条1項
・第2類型(後見命令等の処分)-法126条2項(後見開始の審判事件を本案とする保全処分)
・第3類型(職務執行停止等の処分)-法174条1項(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判事件を本案とする保全処分)
・第4類型(仮差押・仮処分その他の保全処分)-法157条1項(婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分)

○手続
・申立時期-法105条「本案の家事審判事件が係属する家庭裁判所」とあり「申立があった後」※申立は調停でも良い
第157条(婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分)
 家庭裁判所(第105条第2項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、次に掲げる事項についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、当該事項についての審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分
二 婚姻費用の分担に関する処分
三 子の監護に関する処分
四 財産の分与に関する処分

その他には
親権者の指定または変更(法175条1項)
遺産の分割(法200条1項)
扶養の順位決定・変更等(法187条)

○管轄-本案審判(調停)事件係属裁判所、高裁に係属する場合は高裁
手続き開始(法117条以下)
保全処分申立-申立の趣旨と事由、保全処分の内容①法律関係形成の蓋然性・②保全の必要性について疎明
保全処分の審理・裁判
申立人の疎明義務・裁判所の職権による事実調査・証拠調べ

第106条(審判前の保全処分の申立て等)
 審判前の保全処分(前条第1項の審判及び同条第二項の審判に代わる裁判をいう。以下同じ。)の申立ては、その趣旨及び保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならない。
2 審判前の保全処分の申立人は、保全処分を求める事由を疎明しなければならない。
3 家庭裁判所(前条第2項の場合にあっては、高等裁判所)は、審判前の保全処分の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、事実の調査及び証拠調べをすることができる。
4 審判前の保全処分の申立ては、審判前の保全処分があった後であっても、その全部又は一部を取り下げることができる。
第107条(陳述の聴取)
 審判前の保全処分のうち仮の地位を定める仮処分を命ずるものは、審判を受ける者となるべき者の陳述を聴かなければ、することができない。ただし、その陳述を聴く手続を経ることにより保全処分の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
第108条(記録の閲覧等)
 家庭裁判所(第105条第2項の場合にあっては、高等裁判所)は、第47条第3項の規定にかかわらず、審判前の保全処分の事件について、当事者から同条第一項又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合には、審判前の保全処分の事件における審判を受ける者となるべき者に対し、当該事件が係属したことを通知し、又は審判前の保全処分を告知するまでは、相当と認めるときに限り、これを許可することができる。


○保全処分の効力
本案審判前の保全処分審判告知によって、即時抗告されても確定を待たず効力が発生(法74条2項)、保全処分は迅速な対応が必要だから。
保全処分の裁判は、一般的に執行力・形成力を有する

○不服申立
保全処分を却下する審判、例外は法110条1項一・二号
保全処分を命ずる審判、但し、保全処分命令の効力発生を停止するためには別に執行停止命令申立が必要(法111条)

○事情変更による取消
審判前の保全処分が確定した後にその理由が消滅し、その他事情が変更したときは家庭裁判所は当該審判を取り消すことができ、その場合、失効は将来に向かって効力が生ずる(法112条)