小松法律事務所

不貞行為第三者慰謝料80万円・150万円の2件地裁判決紹介


○「国民民主党代表不倫騒動雑感-”それがどうした”と言えない日本」で、フランスでは大統領が不貞行為をしてもお咎めはなく、何十人と愛人を有し、葬儀の際は、愛人たちの席順を決めていたことが報じられ、さらに人気が急上昇したとの記事を紹介しました。このような国柄では、不貞行為についてその相手方に損害賠償請求をするなんて考えもないはずです。

○これに対し日本は、不貞行為には大変厳しい評価がなされて、配偶者からの他方配偶者との不貞行為相手方に対する損害賠償請求をするのが当然と考えられています。特に東京地裁にはこの損害賠償請求訴訟が常時継続していると思われます。TKCローライブラリー新着判例コーナー2024年11月14日収録版にも東京地裁での不貞行為損害賠償請求事件判例2件が紹介されています。いずれも平成21年結婚した夫婦の配偶者と不貞行為をした相手に対する損害賠償請求で、いずれも慰謝料請求額は300万円でした。

○令和5年10月13日東京地裁判決(A判決)と、令和5年10月23日東京地裁判決(B判決)の2件で、認められた慰謝料額はA判決が80万円、B判決が150万円でした。認定された不貞期間は、A判決は令和元年10月から同年12月頃までの間に複数回と認定され、B判決では遅くても令和2年9月頃から始まり、判決時まで継続しているようです

○A判決とB判決の一番の違いは、A判決では原告は、被告とCとの不貞関係により、強い精神的苦痛を受けたものと認められるが、上記不貞関係により、原告とCとの婚姻関係に大きな変化が生じたとはうかがわれないと認定され、B判決では、不貞行為を契機に婚姻関係が破綻して離婚協議中であるとされている点です。不貞行為を原因としてA判決では婚姻関係に大きな変化がないところ、B判決では婚姻完全破綻に追い込まれた点から、慰謝料認定額に2倍近い差がでました。B判決では、代理人もつけず被告は答弁書を提出しただけで、強く争っていなかった点も異なります。

○A判決は、不貞期間3ヵ月、回数は複数回で、婚姻関係に大きな変化がないとの認定で80万円もの慰謝料を認定するのは、ちと厳しいと感じますが、不貞行為に厳しい日本の風潮からはやむを得ないとも思われます。不貞行為第三者に慰謝料請求を認める制度を未だに採用しているのは、先進諸国では日本だけとされているところ、交通事故損害賠償請求事件が縮小傾向で、不貞行為慰謝料請求事件が弁護士業務の重要分野となっているのが痛し痒しです。