不貞行為配偶者に対する慰謝料70万円の支払を認めた地裁判決紹介
○この原告の請求について、元妻の不貞行為相手方が解決金130万円支払済みであることを考慮して、70万円の慰謝料支払を認めた令和5年10月11日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。元妻不貞行為相手方が130万円の解決金を支払うとき、元妻の責任も含めて一切を解決するとしなかったことが不思議です。
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主 文
1 被告は、原告に対し、77万円及びこれに対する令和4年11月23日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のそのほかの請求を棄却する。
3 訴訟費用は、7分の1を被告の負担とし、そのほかを原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 原告の請求
被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和4年11月23日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、原告が、元妻である被告及びその不貞相手(以下「本件不貞相手」といい、被告と併せて「被告ら」という。)に対し、被告らの不貞行為により、原告の貞操権ないし平穏な婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害されたと主張して、共同不法行為に基づき、連帯して、精神的損害に対する慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日から民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原告と本件不貞相手との間においては、訴訟上の和解が成立しており、原告は、これに基づきすでに本件不貞相手から解決金として130万円を受領している。
被告らが原告と被告の婚姻期間中に不貞行為を行ったことに争いはなく、本件の争点は慰謝料額である。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実(証拠等の記載のある事実を除き、当事者間に争いがない。)
(1)原告(昭和58年生まれ)と被告(昭和59年生まれ)は、平成28年5月、婚姻した。原告と被告との間に子はいない。(甲1)
(2)原告は,令和3年9月頃以降、仕事の都合で仙台に単身赴任をするようになった。
被告は、同年11月頃、膵炎のため入院することがあったが、この際、原告は被告の病室に見舞いに来ることはなかった。
もっとも、原告と被告は、少なくとも後記のとおり被告による不貞関係が発覚する直前の2か月弱の間(令和4年4月及び5月)は、互いに、毎日のように円満なLINEのやり取りを行い、互いの誕生日を祝い、愛情を確認するようなメッセージの送信もしていた(甲3〔枝番も含む。〕)。
(3)本件不貞相手は、遅くとも令和3年12月中旬頃から、原告と被告が婚姻関係にあることを知りながら、被告と不貞行為を行うようになり、少なくとも令和4年4月中旬頃までは不貞関係を継続した(以下「本件不貞関係」という。)。
被告は、同月頃に、本件不貞相手の子を妊娠していることを知り、その子を出産したい気持ちもあることやその他の被告の想いを記載した手紙(甲2。以下「本件手紙」という。)を本件不貞相手に送付したが、結局、中絶し出産には至らなかった。
本件手紙は、本件不貞相手の妻に発見され、同年5月下旬頃、その画像が本件不貞相手の妻から原告に送信されたため、本件不貞関係が原告に発覚した。
(4)本件不貞関係を知って怒った原告は、令和4年5月22日、転勤先の青森県から被告の住む自宅を訪れ、被告と離婚について話し、その際に、被告に対し、被告名義の銀行口座の預金残高の半額を原告名義の預金口座に送金するように強く求め、嫌がる被告を押し切り、214万円を送金させた(乙3、6、7)。
その後、原告は、飼い犬を連れて、被告名義の車に乗って、原告の実家に帰った。
(5)原告と被告は、令和4年6月21日、協議離婚をした。
(6)原告は、令和4年8月頃、自身のInstagramに本件手紙の画像を掲載したうえで、被告に浮気をされて離婚した旨を投稿するとともに、原告と被告の共通の友人らに対しても同画像付きで同様のメッセージを送るなどした(乙1)。
2 慰謝料額について
(1)被告らが本件不貞関係にあった頃において、原告と被告との婚姻関係が破綻していたと認めるに足りる証拠はなく、これが原告に発覚してから約1か月程度で原告と被告が協議離婚をしていることからすれば、本件不貞関係により、原告と被告との婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害されたと認められるから、本件不貞関係は、原告に対する共同不法行為を構成する。
(2)そして、本件不貞関係の継続期間や、被告が本件不貞相手の子を妊娠していたこと、本件不貞関係が原告に発覚してから約1か月程度で原告と被告が協議離婚をしていること、原告と被告との婚姻期間、本件不貞関係の発覚後の原告の行動その他本件に現れた一切の事情を考慮したうえで、共同不法行為者である本件不貞相手が、すでに原告に対して解決金として130万円を支払っていることを踏まえると、被告らの共同不法行為によって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料として、被告が原告に対して支払うべき残額は70万円をもって相当と認める。また、被告らの共同不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は7万円をもって相当と認める。
3 結論
以上によれば、原告の請求は、77万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年11月23日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるが、そのほかは理由がない。よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第30部 裁判官 塩田良介