小松法律事務所

不貞行為損害賠償請求事件での不貞配偶者と不貞相手の負担割合判決紹介


○不貞行為について不貞行為第三者に対する請求事件判決は山のようにありますが、不貞行為配偶者に対する請求事件判決は余り見当たりません。不貞行為をされた側の怒りは、不貞行為をした配偶者よりも、その相手方となった第三者に向かうからと思われます。しかし、日本における不貞行為損害賠償請求の根拠は、不貞行為をした配偶者とその不貞行為相手方となった第三者の共同不法行為と解釈されており、不貞行為配偶者も責任があります。

○不貞行為配偶者とその相手方不貞行為第三者の共同不法行為ですから、それぞれの責任割合もあり、通常、直接に貞操義務を負う配偶者の責任が重く、その相手方の責任は副次的なものとする判例が多く見られます。籾山善臣弁護士が記述した「不貞慰謝料の求償権とは?負担割合の判例相場と不行使(放棄)の合意」というサイトの「2章 不貞慰謝料の求償権の負担割合は6:4?3つの判例から相場を分析」との記事に重要な3判例要旨が紹介されていましたので、以下に引用します。

平成22年2月9日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)
「Xの慰謝料は300万円が相当であるところ、YとAの書く損害賠償債務はいわゆる不真正連帯債務の関係になるが、婚姻共同体の平和は第一次的に配偶者相互の守操義務、協力義務によって維持されるものであって、不貞行為又は婚姻関係破綻の主たる責任は不貞行為を働いた配偶者にあり、その不貞行為の相手方の責任は副次的なものにとどまると解される。」
「しかし…Aが、Xから慰謝料請求を受けていないにもかかわらず、副次的な責任しか追わないYが高額な慰謝料債務を負うとするのは公平とはいえない。これらの事情を考慮すると、Yは、慰謝料300万円のうち200万円の限度でAと連帯して賠償責任を負い、残余は主たる責任を負うAの個人責任に属すると解する」。

平成16年9月3日東京地裁判決(出典不明)
「不貞行為は、平穏な家庭生活を営むべき利益を侵害する不法行為であり、これは、不貞をされた配偶者からすると、不貞配偶者と第三者の共同不法行為であるというべきである。共同不法行為による損害賠償請求権は不真正連帯債務であり,賠償をした加害者は,他方の加害者に対し、損害への寄与の割合を超えた部分につき求償権が発生するというべきである。ただ、不貞行為による平穏な家庭生活の侵害は,不貞に及んだ配偶者が第一次的に責任を負うべきであり、損害への寄与は原則として不倫の相手方を上回るというべきである。」
「このような経緯等をふまえると…権利侵害に対する寄与度は、原告3割、被告7割と考えるのが相当である。」

平成16年3月26日東京地裁判決(出典不明)
「夫婦間の不貞行為又は婚姻破綻についての主たる責任は原則として不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものと解すべきであるから、慰謝料の算定に当たっても、この点を考慮することが相当である。」
「前提となる事実及び弁論の全趣旨を総合して判断すると、本件不貞行為は、専ら被告Y1が強引に開始し、主導的に継続させたものであり、被告は受動的であったと評価でき…本件に おいて認められる一切の事情を総合して慰謝料の額を検討すると、被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額は、30万円をもって相当であるというべきである。」