小松法律事務所

人妻と子らの前で上半身裸で過ごしたこと等で不貞行為否認高裁判決紹介


○「人妻と子らの前で上半身裸で過ごしたこと等で不貞行為認定地裁判決紹介」の続きで、その控訴審の令和3年11月4日東京高裁判決(ウエストロー・ジャパン)全文を紹介します。

○原審令和3年4月20日東京地裁判決(LEX/DB)の不貞行為認定は、ちと強引過ぎると思っていましたが、控訴審判決は、不貞行為は認定出来ないとして、原判決を取り消し、原告夫の請求を棄却しました。

○控訴審判決は、原審判決が不貞行為認定の根拠とした平成28年撮影のB・Cが写った写真の存在については、飲食店や駅等の場所で控訴人らが親密な様子を見せていたことを表すにすぎず,これらによって直ちに,控訴人らの間にこの頃までに性的関係があったことが推認されるとはいえないとし、CがBの自宅で上半身裸の状態で子ら及びBと過ごすことや,B及び子らとともに宿泊付きで出かけることがあったことについては、子らとともに宿泊したのであって,控訴人らの間に性的関係があったことを認めるに足りるものとはいえないとしました。

○控訴人Bは,被控訴人との婚姻生活に不満を抱いており,遅くとも平成28年9月頃には,離婚を考えている旨を被控訴人に伝えたが,平成29年1月頃になっても,控訴人Bと被控訴人との関係が修復されることはなく,同年3月13日に本件別居に至ったとの経緯も、B・C間の不貞行為を認定しなかった理由としており、妥当な結論と思われます。

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主    文
1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 前項の取消部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

 主文同旨

第2 事案の概要
1 本件は,控訴人B(以下「控訴人B」という。)と婚姻関係にある被控訴人が,控訴人らは不貞行為に及んだと主張して,共同不法行為に基づく損害賠償として,控訴人Bに対し,慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達日の翌日)である令和元年10月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ)所定の年5分の割合による遅延損害金(ただし,控訴人C(以下「控訴人C」という。)に対する請求の限度で控訴人Cと連帯)の支払を求め,控訴人Cに対し,控訴人Bと連帯して慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達日の翌日)である令和元年10月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 原審は,被控訴人の請求を慰謝料120万円及びこれに対する遅延損害金の限度で認容したところ,これを不服として控訴人らが控訴した。

2 前提事実並びに争点及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の2及び3(原判決2頁20行目から3頁26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人の請求は理由がなく,棄却すべきものと判断する。
 その理由は,次の2のとおり加除訂正をするほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決4頁2行目から5頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


(1) 原判決4頁12行目の「撮影したものである。」を「撮影したものであり,控訴人らは,肩を寄せ合い,控訴人Bの髪と控訴人Cの頬が触れ合うような距離で,カメラに視線を向けている。」に,17行目の「原告」から同行目末尾までを「控訴人Bは,平成27年に入院した際やその後に,育児や家事に対する被控訴人の協力が十分でないと感じたことなどから被控訴人との婚姻生活に不満を抱いており,遅くとも平成28年9月頃には,離婚を考えている旨を被控訴人に伝えたが,平成29年1月頃になっても,控訴人Bと被控訴人との関係が修復されることはなく,同年3月13日に本件別居に至った(丙4(資料1,2を含む。),控訴人B本人)。」にそれぞれ改める。

また,原判決4頁20行目末尾の次に行を改めて「(5) 控訴人Cは,平成29年4月に,控訴人Bが本件別居後に生活していた住居から徒歩15分程度の場所に転居し,その後,週に2,3回程度の頻度で,控訴人Cが控訴人Bの車に同乗して出勤することがあった(甲11,控訴人B本人,控訴人C本人)。」を加え,21行目の「(5)」を「(6)」に改め,22行目末尾の次に「また,控訴人らは,日帰りでゴルフに行くこともあった(控訴人B本人,控訴人C本人)。」を加え,23行目の「(6)」を「(7)」に改め,26行目末尾の次に「また,控訴人ら,控訴人らと控訴人Bの母,控訴人Cと控訴人Bの母は,2人又は3人で食事をしたり飲酒をしたりすることもあった(控訴人C本人)。」を加える。

(2) 原判決5頁3行目の「相当に」を削り,4行目末尾の次に「しかし,これらの写真は,飲食店や駅等の場所で控訴人らが親密な様子を見せていたことを表すにすぎず,これらによって直ちに,控訴人らの間にこの頃までに性的関係があったことが推認されるとはいえない。」を加え,5行目の「その後」を「また」に改め,6行目冒頭に「その後,控訴人Cが控訴人Bの車に同乗して出勤することがしばしばあり,控訴人らは日帰りでゴルフに行ったり,食事をしたりすることもあり,」を加え,8行目の「子らも含めて被告らが親密な関係にあった」を「控訴人らが親密な関係にあり,子らも控訴人Cを拒否する態度ではなかった」に改める。

(3) 原判決5頁12行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。
「しかし,控訴人らと子らが,上記のとおり,宿泊を伴う旅行をしているとしても,子らとともに宿泊したのであって,控訴人らの間に性的関係があったことを認めるに足りるものとはいえないし,上記各事実その他本件各証拠を総合しても,控訴人らが,会社の上司と部下という関係から発展した親密な人間関係を超えて,性的関係にあったことが推認されるということはできない。なお,仮に上記の宿泊を伴う旅行が控訴人らの間の性的関係を推認させるものであるとしても,認定事実(3)によれば,本件別居の時点で,控訴人Bと被控訴人の間の婚姻関係は破綻したものと認められ,破綻後の事情というべきである。

 また,性的関係に至らなくても,婚姻を破綻に至らせるような異性との交流・接触は不貞行為として不法行為に当たる場合があると解されるが,上記のとおり,控訴人Bと被控訴人の婚姻関係は,本件別居の時点で破綻に至ったものと解されるところ,控訴人らの関係に関する上記各事実その他本件各証拠を総合しても,控訴人らが,本件別居以前に,控訴人Bと被控訴人の婚姻関係を破綻に至らせるような交流・接触をしていたと認めるには足りず,控訴人らの間に,上記のような性的関係に至らない不貞行為があったということもできない。
 これらによれば,控訴人らが不貞行為を行ったということはできず,控訴人らの被控訴人に対する不法行為の成立は認められない。


3 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ,これを一部認容した原判決は失当であり,本件各控訴は理由があるから,原判決中控訴人らの敗訴部分を取り消した上,この部分に係る被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第21民事部 (裁判長裁判官 定塚誠 裁判官 佐藤重憲 裁判官 須賀康太郎)