小松法律事務所

”不倫への異常なバッシングは、日本の「ゆがんだ教育」が招いた”紹介


○数年前はイケメン俳優、数ヶ月前はお笑い芸人、最近はオリンピック候補水泳有名選手と週刊誌で不倫を取り上げられ、猛烈なバッシングを受け、イケメン俳優は離婚、お笑い芸人と水泳有名選手は、いずれも活動停止に追い込まれました。不倫をすることがあたかも、覚醒剤や大麻等の犯罪を犯した如くにごうごうたる非難を浴びます。不倫は、法律的には、犯罪ではなく、民事損害賠償請求の対象になるだけで、且つ、先進国の多くは、不倫を損害賠償請求の対象にしていません。

○どうして日本は、有名人の不倫について、別に第三者に迷惑をかけているわけではないのに、関係の無い第三者がこれだけ大騒ぎをして、バッシングが凄いのだろうかと、不思議に思っていました。それが、最近、ノンフィクションライター窪田順生氏の記事を見て、少し納得しました。日本人が幼い頃から受けている、「自分勝手に振る舞うな」という洗脳に近い教育がベースにあるからとのことです。以下に、その記事を抜粋します。

窪田順生
ノンフィクションライター くぼた・まさき
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。



東出不倫への異常なバッシングは、日本の「ゆがんだ教育」が招いた
窪田順生:2020.1.30 5:35

東出昌大さんの不倫騒動へのバッシングが止まらない。不倫の内容がひどいから、という理由だけで、この現象は説明できない。日本人が幼い頃から受けている、「自分勝手に振る舞うな」という洗脳に近い教育がベースにあるからだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

東出さん不倫を徹底的に叩く日本人の心理とは?
そこまで奥さんがかわいそうだというのなら、もうそっとしておいてあげればいいのではないか。

発覚からずいぶんたったのに、いまだに大炎上中の俳優・東出昌大さんの不倫騒動。奥様である女優の杏さんや子どもたちが平穏な日々を取り戻すためにも、さっさと沈静化してもらいたいところだが、メディアではしつこく東出さんと、お相手の女優を断罪している。

なぜ“被害者”である杏さんたちのダメージを考慮せず、このようなメディアスクラムが過熱してしまうのかというと、シンプルに「数字」が取れるからだ。

東出さんや唐田えりかさんがいかにロクでもない人間かと、叩けば叩くほど視聴率やアクセスが上がる。再生回数欲しさに、どんどん過激な動画をつくっていくユーチューバーを想像していただければわかりやすい。

では、どうして日本人はそんなに東出さんと唐田さんの「公開処刑」を見たがるのか。不倫カップルがスカッと成敗された、みたいな勧善懲悪劇を見ると胸がスッキリして明日も仕事を頑張ろうという気持ちになる、という方も多いかもしれないが、テレビに出ている専門家の方によれば、今回の炎上は以下の3つがポイントだという。

・「イクメン」「おしどり夫婦」で売っていたので、「裏切られた」と感じた
・妊娠中の不倫、しかも3年も継続というゲスっぷりに世の女性の怒りが爆発
・お相手とされる若手女優のインスタグラムなどでの「匂わせ」がさらに燃料を投下した


言われてみれば、どれも納得である。ただ、「そもそも」というところで言わせていただくと、テレビで見かける程度で、会ったことも話したこともない他人の不倫にここまでブチギレできるのは、もっと別の根本的な理由があるのではないかと思っている。

それは、我々が幼い頃から叩き込まれている「自分勝手な振る舞いをする者は社会全体で制裁をしてもよろしい」という、「洗脳」にも近い国民教育だ。

「個人の勝手な行動」に異様な拒否感を示す日本人
「はあ?ワケのわかんねえことを言って不倫を擁護するつもりか」と不快になる方も多いかもしれないが、筆者は石田純一さんのように「不倫は文化」的なことを主張するつもりもないし、東出さんたちをかばおうという気もサラサラない。

実は我々は世界の中でも有数の、「個人の勝手な行動」に対して厳しい国民であって、この他人の振る舞いへの異常な執着心が、東出さん、唐田さんたちへの常軌を逸したバッシングのベースにあるのではないか、ということが指摘したいだけなのだ。

あまりそういうイメージがないかもしれないが、我々日本人が「個人の勝手な行動」に世界一うるさい国民だということを示すデータは山ほどある。わかりやすいのは、内閣府が平成30年に実施した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」だ。

日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンという7つの国で、それぞれ満13歳から満29歳まで1000人程度の男女を対象に実施されたこの調査では、日本の若者だけに見られるさまざまな精神的特徴や思想などが見事に浮かび上がっている。しかし、その中でも際立って「異様」な結果を示したのが、「社会規範」についての意識だ。

「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由だ」という質問に対して、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と回答した若者は、なんと49.4%。つまり、若者の半分は、他人に迷惑をかけなくても自分勝手な振る舞いは自重すべきだ、と感じているのだ。

「素晴らしい、最近の若者もまだまだ捨てたもんじゃない」と誇らしげに感じる方も多いが、これほどもの分かりのいい若者が溢れる国というのはかなり珍しい。いや、「異常」と言ってもいい。

例えば、日本では何かにつけて「息苦しい国だ」というイメージが定着しているお隣の韓国では20.7%、マジメな国民性が日本とよく似ているなんて言われるドイツでは21%、アメリカ(15.8%)やフランス(15.2%)はもっと低い。

世界では、他人に迷惑をかけなければ何をしようと俺の勝手だろ、という若者がメジャーなのに対して、どういうわけか日本では、いかなる理由があっても自分勝手な振る舞いは許されない、と考えている若者が圧倒的に多いのである。

もちろん、この「個人の勝手な行動」への強烈な罪悪感というのは、若者に限らず日本人全体の思想だと考えた方がいい。日本の教育システムや社会システムは戦前からほとんど変わっていない。ということは、現代の13歳から29歳に見られる特徴というのは当然、彼らの親世代、祖父母世代から脈々と受け継がれてきた、と見るべきなのだ。

 これが、東出さんたちへの強烈なバッシングにつながっている可能性はないだろうか。
(以下、略)