小松法律事務所

”「不倫で番組降板」がアメリカではありえない訳”一部紹介


○「複数の結果発生地がある場合の不法行為準拠法を判断した高裁判決紹介」の続きで、アメリカのニューヨーク州では、不倫相手に留まらず不倫した配偶者への慰謝料請求が認められない理由を説明した記事の紹介です。

○日本では、特に芸能人が不倫すると、サンドバッグの様に叩かれ、時に芸能人として再起不能にまで社会的制裁を受けます。最近は、美人妻をめとっているくせに数多くの不倫を、多目的トイレまで利用して重ねていたという人気お笑い芸人が、長く話題になっています。あれほどの美人を妻にしているのに不倫はけしからんと言う論調に、ビートたけし氏が、その論調はおかしいと正論を述べていました。美人妻を強調すると、美人妻でない場合は不倫しても良いのかとなり、それこそ差別だと言います。

○不倫を叩くのは、基本的には「妬み」ですが、とびきりの美人を妻にして、且つ、多くの女性と不倫を重ねることは、実は、男性ならば誰でもしてみたいことの典型です。しかし、多くの人はしたくても出来ないため、それを実現している男性に対する「妬み」はより強くなります。その意味で、美人を妻にした上で多くの不倫するのはけしからんと言う論調は全く自然です(^^)。

○この日本人の「妬み」根性について、アメリカと比較した記事を見つけましたので紹介します。猿渡由紀さんという方の「『不倫で番組降板』がアメリカではありえない訳」と言う以下の記事です。

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「不倫で番組降板」がアメリカではありえない訳
政治と芸能を「同価値に扱う日本人」の奇妙
猿渡 由紀 : L.A.在住映画ジャーナリスト

お笑いタレント渡部建さんの不倫が、あいかわらず日本のメディアを騒がせている。彼が謝罪会見をするのかしないのかにも、注目が集まっているようだ。

         (中略)


差別はダメでも「不倫」には寛容なアメリカ
今やったことであれ、大昔の失敗であれ、ハリウッドのタレントは差別発言をしてしまったら、絶対に公に謝罪をしなければならない。一方で不倫で謝罪会見をすることは、まずない。

世間もそれを求めていないし、不倫したタレントが映画やテレビから降板させられることもない。事実、ジュリア・ロバーツやブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ベン・アフレックなど、不倫経験があることで知られるスターは今も大活躍している。

なぜ差別をした俳優は即座に解雇され、不倫はお咎めなしなのか。ロサンゼルス在住の映画ジャーナリストのジル・プリングさんは、「結局のところ、ハリウッドにとって一番大事なのはお金だからでは」という。

「人種差別発言をした俳優が出る映画は、興行成績にすぐ影響します。でも、不倫はそうではありません。それは実績として証明されています」と、プリングさん。たしかに、たとえば黒人に向けての差別発言をした場合、黒人はもとより、ほかの有色人種やリベラル志向の白人は、その俳優の映画を観に行かないだろう。

実はその映画を観たいと思っていた人も、周囲の目を恐れてやめるかもしれない。その割合は相当なものだ。さらに問題の俳優を雇い続けることで、そのスタジオは人種差別者を擁護していることになり、ほかの作品までボイコットされてしまう危険がある。映画を作るのには多額のお金がかかるのに、そんなことになっては台無しだ。

では、なぜアメリカの観客は「不倫したスターを出すな」と怒らないのか。『MEG ザ・モンスター』『ヒステリア』などのプロデューサーのケネス・アチティさんは、「スターのセックスライフなんて、どうでもいいことだからですよ。LGBTの権利が広く受け入れられてきた今では、なおさらです」という。

それは納得だ。「文春砲」が現政権の汚い秘密を暴露するのと同じように、芸能人の私生活の秘密を明かす日本。影響力を持つ雑誌が「政治スキャンダル」と「芸能ゴシップ」という真逆のテーマを同程度に扱う結果、日本人の多くが両方に興味を持ち、同じ重みを持っている。

アメリカでは、政治スキャンダルや芸能ゴシップネを扱う媒体はまったく別で、そこにははっきりとした線がある。ゴシップ専門の雑誌やサイトにまるで興味がない人は、それらの“ニュース”を知らないし、知りたいとも思っていない。ゴシップの需要が十分あるかたわら、それらをいっさい読まない人もたくさんいるのだ。

また、アメリカ人にとって「しょせんはよその家の中のこと」という認識が強いのも関係しているだろう。不倫は当人たちの問題であり、ほかが立ち入る領域ではないという考え方だ。裁判所ですら立ち入らないのである。

アメリカでは離婚において「有責」という概念がなく、どちらが悪かったかは関係がない。すなわち、慰謝料も存在しない。ハリウッドスターが離婚で多額のお金を払ったというニュースは時々出るが、それは慰謝料ではなく、財産分与だ。不倫をしたのは向こうなのに、稼ぎが多いがゆえに不倫されたほうが財産を払うはめになるということも、しょっちゅう起こる。不条理な話だが、それこそ、ふたりの大人の間の問題である。

差別に怒るアメリカ人、不倫に騒ぐ日本人
人種差別発言は、世の中に悪影響を与える。みんなが良い方向に変えようと努力している今のような時代は、なおさらだ。そんな勢いに水を差し、時代を逆行させるような発言をしてしまったら、謝罪し、正さなければならない。差別の対象となる人々にも、傷つけたことをお詫びしなければいけない。

一方で不倫は外に迷惑をかけない。だからアメリカのスターは、「プライベートな話はお断り」と言えばすむ。雇う側も気にしない。前述のアチティさんも、「ある俳優が不倫をしたとわかったところで、キャスティングを変える必要は微塵も感じない」と言っている。

もちろん不倫は人として、いけないことだ。道徳的に間違っているし、身近な人、愛する子供を傷つける行為である。だが、それは本人が一生、肩に背負っていく個人的な罪。外部は決して、それを「裁く」権利をもたないのだ。