婚姻中住宅ローン返済不動産の財産分与の考え方を判断した家裁審判紹介
○考え方としては、
①妻は婚姻中1500万円の完済に協力したのだから、その半分の750万円とするもの
②婚姻時時価3000万円土地建物の住宅ローン1500万円は土地建物の2分の1相当なので、離婚時財産分与対象額は土地建物時価4000万円の2分の1相当額2000万円の半分の1000万円とするもの
③土地建物取得のためのローン全体額2500万円の内1500万円は6割であり、その半分の3割が財産分与対象となり、4000万円の3割1200万円とするもの
との3説あり、この事例では、③説が妻にとって一番有利です。但し、離婚時土地建物時価が2000万円に下落していた場合は、①説が妻にとって一番有利になりますが、財産分与はあくまで離婚時時価が基準になりますので採用される可能性はないと思われます。
○おそらく上記の内③説をとったと思われる平成29年4月28日さいたま家裁越谷支部審判(ウエストロー・ジャパン)関係部分を紹介します。その考え方は、自宅建物取得代金1500万円の内ローン部分900万円は6割相当になるところ、婚姻中夫婦共同で返済したローン額約620万円は、全ローン返済額1396万円の約5割ととして、自宅建物6割の5割即ち3割を夫婦共同財産とする割合計算をしているからです。但し、自宅建物時価を固定資産評価額とした計算は妻にとって著しく不利と思われます。
③の考え方の基本は、「財産分与対象額 = 不動産の時価 ×(婚姻後の返済額 ÷ 住宅ローン総額)」となります。
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主 文
1 申立人から,相手方に対し,別紙の登録事項等証明書記載の自動車を分与する。
2 申立人は,相手方に対し,前項の自動車について,所有権移転登録手続をせよ。
3 相手方は,申立人に対し,432万3520円を支払え。
4 手続費用は,各自の負担とする。
理 由
1 事案の概要
本件は,申立人が,元妻である相手方に対し,離婚に伴う財産分与を求める事案である。
2 事実関係
(1) 申立人と相手方は,平成13年‥月‥日婚姻した夫婦である。子はいない。
(2) 相手方は,平成27年‥月‥日,自宅を出て申立人と別居した。申立人と相手方は,同年‥月‥日調停離婚した。
(3) 申立人と相手方の間では,平成28年‥月‥日,相手方ほか1名が申立人に対し,解決金230万円を支払い,他に何らの債権債務がないことを確認する(ただし,財産分与を除く。)旨の和解が成立した。
3 財産分与の判断
(1) 自宅建物
ア 申立人は,婚姻前の平成8年‥月,実父の土地上に,代金1500万円で自宅建物を新築した。代金のうち600万円は申立人の自己資金,残りの900万円は‥の住宅ローンでまかなった。住宅ローンは,申立人の給与から返済し,その額は年間69万円(元利均等払い)である。申立人は,父から相続した土地の売却代金から,平成21年‥月に260万円,平成24年‥月に67万円を返済して,住宅ローンを完済した。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円である。
イ 自宅建物の取得資金1500万円のうち,申立人の自己資金600万円の分は特有財産であり,残りの住宅ローン900万円の分は全体の6割に相当する。この住宅ローンは,
①申立人が婚姻前に特有財産で約4年半(年額69万円,合計約759万円),
②申立人と相手方が婚姻中に共同して約11年間(同,合計約620万円),
③相手方が終盤に特有財産から合計327万円を返済し,
①~③の合計は約1396万円であった。上記②の共同返済額は全ローン返済額の約5割を占める(返済額中の元金の割合は,上記①が少なく,②が中位で,③が多い。)。
ウ そこで,自宅建物の取得資金のうち住宅ローンの割合(6割)に,全ローン返済額のうち共同で返済した上記②の割合(5割)を乗じると,自宅建物の約3割が夫婦共同財産ということができる。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円であるから,その3割である84万8000円が夫婦共同財産である(千円未満四捨五入,(2)~(7)の末尾も同じ)。