小松法律事務所

財産分与請求として共有不動産移転・現金支払を認めた家裁審判紹介


○元妻から元夫への財産分与請求について判断した令和3年8月31日千葉家裁佐倉支部審判(判タ1501号103頁)全文を紹介します。この家裁審判では、元妻への財産分与として、元夫が2分の1の共有持分権を有する不動産全部の移転登記と3200万円の支払と認めています。共有財産についての別紙一覧表が見たいのですが、省略されています。財産分与一覧表サンプルを後記します。

○この家裁審判は、共有財産総額1億3302万6107円として、殆ど結論だけしか論述されていませんが、これを不服とした元夫が抗告し、抗告審令和3年12月24日東京高裁決定で、預金・不動産等共有財産を特定して財産毎に判断して、結論が変更されています。この東京高裁決定は別コンテンツで紹介します。財産分与請求では、残された財産が夫婦共有財産に含まれるか否か即ち共有財産か特有財産かが争いになりますが、東京高裁決定では、その考え方について重要な判断が含まれています。

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主   文
1 申立人に対し,別紙物件目録記載の不動産の相手方の共有持分全部を分与する。
2 相手方は,申立人に対し,同不動産の相手方の共有持分全部について,前項の財産分与を原因とする相手方の共有持分全部移転登記手続をせよ。
3 相手方は,申立人に対し,3200万円を支払え。
4 手続費用は,各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨
 相手方は,申立人に対し,財産分与として相当額を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば次の各事実が認められる。
(1)申立人と相手方は,平成4年11月5日婚姻したが,平成30年12月12日協議離婚した(以下「本件離婚」という。)。

(2)本件離婚当時の申立人及び相手方の夫婦共有財産、これに関する当事者の主張及び裁判所の判断は別紙一覧表記載のとおりである。
 相手方は,本件離婚当時,申立人は,財産分与請求権を放棄したと主張する。しかしながら,上記主張を裏付けるに足りる資料はなく,上記夫婦共有財産の金額や,申立人が,本件離婚後,令和元年5月7日に本件調停申立てをしたこと,相手方は,本件離婚の直前に別紙一覧表(相手方名義財産)番号13及び16記載の預金から多額の引出しをしていたこと,相手方は申立人代理人から財産分与請求を受けるや,父が,平成31年2月28日,「本書について話は調停の場で話し合う用意があります。」との「通知書」と題する書面を送付し,本件調停の申立ての直前に同番号4の不動産の相手方共有持分を無償で母に移転したこと,申立人から,調査嘱託に基づき,令和2年2月28日付第2主張書面で,同番号5ないし9の土地の存在を指摘されるや,同年3月23日,上記土地を母や会社に名義変更したことなど,自ら財産分与を免れる意図と見られる行動に出たことなどからしても,同主張は採用できない。 

2 前記一覧表によれば,申立人と相手方の夫婦共有財産の総額は,1億3302万6107円となり,相手方から申立人に分与すべき金額は,下記計算式によると,4713万1813円(円未満切捨て)となる。
1億3302万6107円÷2-1938万1240円=約4713万1813円

3 上記夫婦共有財産の状況に,申立人が別紙物件目録記載の不動産の相手方共有持分の分与を希望していることや,申立人がうつ病に罹患していること等関連する一切の事情を考慮すると,申立人に対し財産分与として同持分を分与し,相手方に対し,申立人へ同分与を原因とする相手方の共有持分全部移転登記手続をすること及び財産分与として3200万円の支払いを命ずるのが相当である。

別紙 物件目録〈省略〉
一覧表〈省略〉