小松法律事務所

面会拒否間接強制金50万円請求に対し20万円を認めた高裁定紹介


○「面会拒否間接強制金50万円請求に対し5万円のみ認めた家裁決定紹介」の続きで、その控訴審である平成30年3月22日大阪高裁決定(家庭の法と裁判17号41頁)全文を紹介します。

○子を面会交流させることを内容とする債務名義に基づき抗告人が1回につき50万円の間接強制金支払を申し立てていましたが、一審家裁決定は5万円しか認めませんでした。控訴審決定は、相手方が抗告人との別居から約3年間面会交流を拒否し続けたことなどから,相手方に面会交流させる義務を継続的かつ確実に履行させるためには,相手方の歯科医師としての収入や経済状況等を踏まえ,相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要があるなどとして,強制金の額を不履行1回につき5万円とした原決定を変更し,不履行1回につき20万円としました。

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主   文
1 原決定を次のとおり変更する。
2 大阪高等裁判所平成29年(ラ)第○○号子の監護に関する処分(面会交流)審判に対する抗告事件の執行力ある決定正本に基づき,相手方は,抗告人に対し,別紙面会交流実施要領記載の内容で未成年者Cを抗告人に面会させる義務を履行せよ。
3 相手方は,本決定の送達日以降,前項の義務を履行しないときは,抗告人に対し,不履行1回につき20万円を支払え。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙執行抗告状及び抗告理由書(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原決定を上記のとおり変更するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原決定の「理由」欄に説示のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原決定2頁11行目の「決定(」の次に「大阪高等裁判所平成29年(ラ)第○○号,」を,13行目の「なお,」の次に「相手方の父母(以下「母方祖父母」という。)は,抗告人と相手方の別居(平成27年○○月)から抗告人の面会交流調停(以下「前件調停」という。)の申立て(同年○○月)までの間,抗告人に未成年者を会わせたことが3回ほどあり,」をそれぞれ加え,同行から14行目にかけての「債務者の父母(以下「母方祖父母」という。)」を「母方祖父母」に改め,16行目の末尾に「他方,相手方は,抗告人からの面会交流の申入れに対し,前件調停前後を通じて,一貫して拒否する姿勢を示し,前件審判手続における親子交流場面調査(平成28年○○月○○日実施予定)にも出頭しなかった。」を加える。

(2) 同3頁25行目の「行われていない。」を「行われていなかった。しかし,相手方は,原決定(平成30年○○月○○日)で強制金の支払を命じられた後の同年○○月と○○月,抗告人と未成年者との面会交流に応じた。」を加える。

(3) 同4頁5行目の「認定されている。」の次に「相手方は,歯科医師の資格を有し,婚姻,未成年者の出産後から現在に至るまで,歯科医師として稼働している。」を加える。

(4) 同5頁7行目から8行目にかけての「前記認定のとおり,」の次に「母方祖父母は,前件調停申立て前に,抗告人に未成年者を複数回会わせており,」を加える。

(5) 同5頁18行目から23行目までを次のとおり改める。
 「 前記第2の認定事実を踏まえて,強制金の額について検討する。
 相手方は,抗告人との別居(平成27年○○月)の後,前件調停前後を通じ,抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け,前件審判手続における親子交流場面調査(平成28年○○月)にも出頭しなかった。その後,本件決定が確定した(平成29年○○月)ことにより,相手方は,本決定別紙面会交流実施要領に従って抗告人と未成年者を面会交流させる義務を負い,母方祖父母の協力(立会い,受渡し)を得て,その義務を履行することができたのに(同別紙3項,4項),第三者機関の関与に固執して,面会交流を拒絶し,原審に本件申立てがされても(平成29年○○月),その義務を履行しないことを正当化し続け,原決定で強制金の支払を命じられると,漸く面会交流に応じる姿勢に転じたものである。

 このように,相手方は,抗告人との別居から約3年間,抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け,本件決定後も,これにより定められた義務を任意に履行しなかった。相手方が上記義務を履行したのは,原決定による強制金の支払を命じられた中でのことである。これらの相手方の面会交流に対する約3年間にわたる拒否的な態度等に照らすならば,原決定後に相手方が本件決定により定められた義務を2回程度履行したからといって,相手方が今後もその義務を継続的かつ確実に履行するとみることは困難である。

 したがって,原決定後に相手方が面会交流に応じているとの現状を踏まえても,なお相手方に上記義務を継続的かつ確実に履行させるためには,相手方の収入や経済状況(抗告人から支払われる婚姻費用を含む。)等を踏まえ,相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要がある。その強制金の額については,相手方が歯科医師の資格を有し,現在まで歯科医師として稼働し続け,別件決定時点(平成28年○○月)において,勤務医として年収500万円弱を得ており,その稼働能力が低減したとの事情は認められないことや,抗告人が相手方に対して支払うべき婚姻費用分担金の金額(月額21万円)などの事情に照らし,不履行1回につき20万円とするのが相当である。」

2 よって,上記判断に抵触する限度で原決定を変更することとし,主文のとおり決定する。
 大阪高等裁判所第9民事部 (裁判長裁判官 松田亨 裁判官 檜皮高弘 裁判官 髙橋綾子) 


 〈以下省略〉