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夫購入宝くじ当選金約2億円について妻への財産分与対象とした判例紹介

○申立人(妻)が相手方(夫)に対し財産分与を求めた事案について、相手方夫が当選した宝くじの当選金約2億円の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるから、本件当選金を原資とする資産は、夫婦の共有財産と認めるのが相当であるとした上で、その分与割合については、相手方夫が小遣いの一部を充てて宝くじの購入を続けて本件当選金を取得したこと等に鑑み、申立人妻4、相手方夫6の割合とするのが相当として、相手方夫に財産分与を命じた平成29年3月2日東京高裁決定(判時2360号8頁)を紹介します。

○婚姻中に取得した財産は、原則として夫婦共有財産となりますが、宝くじの当選金は、果たして共有財産と言えるかと問われると、ちと判断に迷います。一審平成28年9月23日前橋家裁高崎支部審判(判時2360号8頁、参考収録)は、「宝くじは,その射倖性により購買者を吸引し,その売上金から当選金等を控除した金員を,地方財政の一助とするものといえる。こうした宝くじの法的性格及び役割に照らせば,当選した宝くじの購入資金の原資が夫婦共有の財産である家計の収入であるとしても,当然に全額が夫婦の共有財産となるものではなく,当該宝くじを購入した者には,当該当選金について一定の優位性ないし優越性が認められるべきである。」としています。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
(1) 原審申立人に対し,原審判別紙1の物件目録1及び2記載の土地建物を分与する。
(2) 原審相手方は,原審申立人に対し,原審判別紙1の物件目録1及び2記載の土地建物について,前項の財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
(3) 原審相手方は,原審申立人に対し,1742万2972円を支払え。
2 手続費用は,第1,2審を通じ,各自の負担とする。

理  由
 (前注)略称は原審判の例による。
第1 抗告の趣旨及び理由

1 原審相手方
 抗告の趣旨及び理由は即時抗告申立書,即時抗告理由書に記載のとおりである。
2 原審申立人
 抗告の趣旨は即時抗告申立書,その理由は即時抗告理由書に記載のとおりである。

第2 事案の概要
 本件は,原審申立人が原審相手方に対し,財産分与を求めた事案である。
 原審は,原審申立人に対し本件土地建物を分与し,原審相手方に対し本件土地建物の所有権移転登記手続及び1000万円の支払を命じる旨の審判をした。
 原審相手方と原審申立人は,それぞれ即時抗告をした。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審申立人に対し本件土地建物を分与し,原審相手方に対し本件土地建物の所有権移転登記手続及び1742万2972円の支払を命じるのが相当と判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原審判の理由の第2の1及び2,第3の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判5頁5行目冒頭から6頁20行目末尾までを次のとおり改める。
「(1) 前提事実に加え,後掲証拠及び審理の全趣旨によれば,原審申立人と原審相手方は平成5年●●●月に婚姻したこと(前提事実(1)),婚姻時に原審相手方は,資産として貯金約5万円を有していたが(乙22),医院に看護師として勤務し,月額約30万円の給料の支給を受け(乙18),また副業として整体業を営み,月額約5万円の収入を得ていたこと,原審相手方は,毎月,給料約30万円と副業の収入のうち2万円程度を原審申立人に交付し,これにより家族の家計を賄ったこと,原審申立人は,平成15年頃まで専業主婦であり,その頃ヘルパー2級(訪問介護員養成研修2級)の資格を取得したこと,原審相手方は,上記副業の収入のうち2ないし3万円程度を小遣いとして費消し,毎月2000円程度,C等の宝くじなどの購入に充て,本件当選金を得たCの購入資金もこれから拠出したこと,原審相手方は,婚姻後に購入し,家族が居住する土地(本件土地)と新築した自宅(本件建物)の住宅ローン約2000万円を負っていたが,Cの当選後,本件当選金を原資として住宅ローンを完済したこと(前提事実(2)ウ,(3)ウ,乙23),原審相手方は,Cの当選後も医院に看護師として勤務し,月額約32万円の給与等の支給を受け(手取りは約27万円,乙19),これをすべて原審申立人に交付して家族の家計を賄い,本件当選金を原資として自分の小遣い分を支出したこと,その後,原審相手方は,平成20年頃,病院を退職し,本件当選金の運用を図るため,トレーダーとして資産運用に専念することになったものの,資産運用による利益が生じなかったため,原審申立人には本件当選金を原資として毎月30万円と年2回50万円を交付し,これにより家族の家計を賄ったこと,原審相手方は,再度病院に勤務するなどしたが,毎月の給料約25万円と本件当選金を原資として毎月5万円を原審申立人に交付し,これにより家族の家計を賄ったこと等が認められる。

 これらの事実によれば,本件当選金を得たCの購入資金は,原審申立人と原審相手方の婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと,本件当選金の使途も,同人ら家族が自宅として使用していた本件土地建物の借入金約2000万円の返済に充て,原審相手方が勤務先を退職してからは,毎月,本件当選金を原資として生活費相当分を拠出したこと等が認められる。そうすると,Cの購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され,本件当選金も家族の住居費や生活費に充てられたのだから,本件当選金を原資とする資産は,夫婦の共有財産と認めるのが相当である。

(2) してみれば,財産分与の対象とすべき財産とその評価額は財産一覧表のとおりであり,評価額の合計は,原審相手方名義の預貯金5761万0878円,保険1501万8382円,不動産744万4167円,前渡金1000万円の合計9007万3427円,原審申立人名義の預貯金124万7135円の総合計9132万0562円と認められる。

(3) 上記対象財産の分与割合について検討すると,原審相手方名義の預貯金,保険,不動産,前渡金等,対象財産のほぼ全部について,本件当選金が原資となっているところ(前提事実(2)イ,ウ,(3)ウ),上記認定のとおり,本件当選金の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるけれども,原審相手方が自分で,その小遣いの一部を充てて宝くじ等の購入を続け,これにより,偶々とはいえ当選して,本件当選金を取得し,これを原資として上記対象財産が形成されたと認められる(上記(1))。これらの事情に鑑みれば,対象財産の資産形成については,原審申立人より原審相手方の寄与が大きかったというべきであり,分与割合については,原審申立人4,原審相手方6の割合とするのが相当である。」

(2) 原審判6頁22行目冒頭から7頁6行目末尾までを次のとおり改める。
「 原審申立人は,年約351万円の収入を得ているが(乙13),大学生の長男と大学進学を予定している二男を養育し,その費用がかかること(甲16ないし20[枝番を含む])等を踏まえても,原審相手方も高額の収入を得られる見込みがあるとはうかがえず(乙14),原審申立人と原審相手方との間で養育費を支払う旨の調停が成立し,一時金として384万円が支払われていること(審理の全趣旨)に照らすと,上記対象財産の清算のほかに,扶養的な事情に基づく交付まで要するものとは認めることができないというべきである。

3 これらによると,原審申立人の取得分は,総評価額9132万0562円の40%相当額である3652万8224円(円未満切り捨て)になる。
 原審申立人は,本件土地建物に居住し,その取得を希望しているため,同人にこれを分与し,原審相手方に対しその所有権移転登記手続を命じるのが相当である。そうすると,その評価額合計744万4167円を控除すべきである。
 また,原審申立人がすでに交付を受けた前渡金1000万円,原審申立人名義の資産相当額合計124万7135円,離婚後に受領済みの41万3950円(審理の全趣旨)も控除すべきである。
 してみれば,原審相手方は,原審申立人に対し,3652万8224円から合計1910万5252円を控除した1742万2972円の支払義務を負うものと認められる。」

2 以上によれば,原審申立人に対し本件土地建物を分与し,原審相手方に対し本件土地建物の所有権移転登記手続及び1742万2972円の支払を命じるべきである。
 よって,原審判は失当であり,原審判を変更することとして,主文のとおり決定する。
 平成29年3月2日
 東京高等裁判所第20民事部 (裁判長裁判官 山田俊雄 裁判官 齋藤清文 裁判官 菊池章)



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平成28年9月23日前橋家裁高崎支部審判

主  文
1 相手方は,申立人に対し,離婚に伴う財産分与として,別紙1の物件目録1及び2記載の土地建物を分与し,かつ,1000万円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,上記土地建物について,本審判が確定した場合,同確定日の財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
3 手続費用はこれを3分し,その1を相手方の,その余を申立人の負担とする。

理  由
第1 申立て

 相手方は,申立人に対し,離婚に伴う財産分与として,別紙1の物件目録記載の土地及び建物並びに相当額の金員を分与する。

第2 事案の概要
1 前提事実(証拠により容易に認定でき当事者において積極的に争わない事実,本件記録上明らかな事実及び当事者間に争いのない事実)

(1) 当事者
ア 申立人と相手方は,平成5年●●●月●●●日に婚姻し,平成8年に長男を,平成11年に二男をもうけたが,平成26年●●●月●●●日,長男及び二男の親権者をいずれも申立人と定めて協議離婚した。
イ 申立人は,ヘルパー2級や介護福祉士などの資格を有している(争いがない)。

(2) 分与の要否が問題となる財産
ア 申立人及び相手方は,上記協議離婚時,別紙2の財産分与対象財産一覧表(以下「財産一覧表」という。)記載の,各名義の財産を保有していた。
 このうち,相手方名義の資産3の不動産の3-1の土地及び3-2の建物は,それぞれ,別紙1の物件目録1の土地及び同2の建物を指す(以下,同土地を「本件土地」と,同建物を「本件建物」と,両者を併せて「本件土地建物」という。)。

イ また,財産一覧表記載の相手方名義の資産の1及び2の金融資産は,いずれも,次に述べる,相手方が平成●●●年の宝くじの当選金(以下「本件当選金」という。)として受け取った金員が原資となっている(本件第7回期日における双方の陳述)。

ウ 相手方は,平成●●●年●●●月,宝くじCで2億●●●万●●●円を当て,同当選金(本件当選金)は,同月12日,●●●の相手方の口座(財産一覧表の相手方名義の資産1-1)に振り込まれた(甲29の2の1枚目)。
 本件当選金は,後記のとおり,本件土地建物に設定された抵当権の被担保債権(住宅ローン)や生活費の支払にも充てられた。

(3) 本件土地建物に関する事実

  (中略)

(4) 不貞行為に基づく損害賠償についての一部調停の成立
ア 申立人は,本件財産分与の申立ての基礎に,相手方の不貞による精神的苦痛を理由とする損害賠償請求権を加えていた。

イ しかし,上記不貞行為についての損害賠償については,平成27年●●●月●●●日,相手方が申立人に対し300万円を支払うことで全て解決した旨の一部調停が成立している(当庁平成27年(家イ)第●●●号)。

2 争点
(1) 本件当選金は財産分与の対象となるか。仮に,なるとして,その分与割合は平等となるか。
(2) 本件における扶養的財産分与の必要性


第3 判断
1 争点(1)について

(1) 相手方が当選したCを含む,いわゆる宝くじは,当せん金付証票法(昭和23年法律第144号)の定める当せん金付証票に該当し,同法は,当せん金付証票の発売により,浮動購買力を吸収し,もって地方財政資金の調達に資することを目的としている(同法1条)。
 すなわち,Cを含む宝くじは,その射倖性により購買者を吸引し,その売上金から当選金等を控除した金員を,地方財政の一助とするものといえる。
 こうした宝くじの法的性格及び役割に照らせば,当選した宝くじの購入資金の原資が夫婦共有の財産である家計の収入であるとしても,当然に全額が夫婦の共有財産となるものではなく,当該宝くじを購入した者には,当該当選金について一定の優位性ないし優越性が認められるべきである。

 上記,見地から,相手方が申立人に分与すべき財産ないし金員の額を検討する。

(2) まず,財産一覧表の相手方名義の資産のうち,金融資産である1の預貯金合計5761万0878円及び同2の保険1501万8382円の合計7262万9260円のうち,その7割に相当する5084万0482円は相手方の固有財産とすべきであると考えるので,夫婦共有の財産額は,その残額の2178万8778円とすべきである。

(3) 次に,本件土地建物は,申立人が現在も住居として使用しており,かつ,相手方もその取得を求めている訳でもないので,申立人に分与されるべきである。
 しかし,前記のとおり,相手方は,本件当選金を原資として,平成14年●●●月から●●●年弱後に当たる平成●●●年●●●月頃に,2083万円8306円を支払っており,これらは全て本件当選金が原資と認められるが,前記のとおり,この弁済金のうち,相手方の固有財産とすべきは,その7割に相当する1458万6814円となる(小数点以下四捨五入,以下同じ)。この金額は,被担保債権元本額である2260万円の約64.5パーセントに相当し,利息金の存在を考慮しても,相手方は,本件土地建物の時価額の6割に相当する金額を固有財産として有しているというべきである。

 したがって,本件土地建物の平成26年当時の価格の6割に相当する446万6500円は,相手方の固有財産と考えるべきである。
 したがって,その残額である297万7667円が申立人と相手方との間の共有財産額と算定すべきである。

(4) そうすると,本件において,財産分与の対象とすべき金額は,それぞれ,次のとおりとなり,分与割合は2分の1と考える。
ア 相手方の金融財産のうち2178万8778円
イ 本件土地建物の価格のうち297万7667円
ウ 前渡金(財産一覧表の相手方の資産の4-1)1000万円
エ 財産一覧表記載の申立人名義の財産の合計額124万7135円
オ 合計 3601万3580円(2分の1の額は1800万6790円)

(5) そして,上記1800万6790円から,申立人の取得する本件土地建物時価額である744万4167円及び申立人名義の資産である124万7135円を控除すると,931万5488円となる。

2 争点(2)について
(1) 甲22ないし24及び25の1ないし11及び審尋の結果によれば,申立人が有している,ヘルパー2級や介護福祉士の資格は必ずしも高額な収入につながるとはいえない事実が認められる。

(2) さらに,申立人が現在満52歳の年齢にあること及び現在満17歳の二男を養育していることも考え合わせるならば,相手方と申立人との間で養育費支払の調停が成立していること(当庁平成26年(家イ)第●●●号,同第●●●号)及び相手方の不貞の問題については前記のとおり300万円を支払う旨の調停が成立していることも考慮しても,一定額の扶養的財産分与額を計上すべきと考える。

3 上記各事情を総合すると,相手方が申立人に財産分与として支払うべき金員の額は,合計1000万円を相当と考える。

第4 結論
 以上の次第で,主文のとおり審判する。
 平成28年9月23日
 前橋家庭裁判所高崎支部 (裁判官 ●●●)

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